ATLとは、成人T細胞白血病(Adult T-cell Leukemia)の略で、白血病・リンパ腫の一種です。以前はその原因は明らかではありませんでしたが、1980年にHTLV-1が発見され、ATLがHTLV-1によって引き起こされていることが明らかになりました。
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ATLは、白血球の中のT細胞にHTLV-1ウイルスが感染し、がん化したことにより発症する血液のがんです。したがってHTLV-1ウイルス感染者のみが発症します。T細胞は、白血球の中でも免疫担当細胞として重要な役割を果たしているので、ATLが発症すると、強い免疫不全を示します。 |
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そのため、健康な人はかからないような感染症(日和見感染症(ひよりみかんせんしょう))にかかりやすくなります。またATLが進行するといろいろな臓器に障害を起こし、放置すると死に至ります。
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全身のリンパ節が腫(は)れたり、肝臓や脾臓(ひぞう)が腫れることもあります。また原因不明の発熱もよく見られます。皮膚紅斑(ひふこうはんー皮膚の赤い発疹、盛り上がったものが多い)や皮下腫瘤(ひかしゅりゅうー皮膚の下にしこりを触れる)などの皮膚の症状、下痢や腹痛などの消化器症状がしばしばみられます。 |
成人T細胞白血病(ATL)の病勢の悪化によって血液中のカルシウム値が上昇(高カルシウム血症)すると、全身倦怠感(けんたいかん)、便秘、意識障害等を起こします。また、免疫能低下により、いわゆる日和見感染症を高頻度に合併します。細菌感染症のみではなく、ニューモシスチス肺炎、クリプトコッカス肺炎・髄膜炎、全身のカンジダ症やアスペルギルス症などの真菌感染症、サイトメガロウイルス肺炎・網膜炎・消化管感染症、汎発性帯状疱疹(はんぱつせいたいじょうほうしん)などのウイルス感染症、糞線虫(ふんせんちゅう)症などの寄生虫感染症等が高頻度に見られます。
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足の付け根や首、わきの下のリンパの腫れ、だるさや発熱、皮膚の発疹などの症状から血液の病気を疑いますが、人間ドックや健診でたまたま見つかることもあります。 一般的な血液検査では白血球が増えることが多く、顕微鏡で観察すると異常な形をしたATLのがん細胞が見られます。特にATLに特徴的な異常細胞を花細胞(フラワーセル)といいます。 |
症状、検査結果からATLを疑った場合には、HTLV-1というウイルスが体の中にいるかどうかを血液検査で検査します(血清の抗HTLV-抗体検査)。この検査が陽性であればHTLV-1というウイルスを保有していることを意味します。 さらに精密検査で次のいずれかに該当する場合にATLと診断します。
①血液中で増えている異常な細胞がT細胞である場合
②腫れているリンパ節や皮膚の病変などを採って調べ 、T細胞のがんである場合
まれに、血清の抗HTLV-1抗体が陽性でありながら、がん細胞中に HTLV-1を含まない、ATLではないT細胞のがんが存在します。診断が難しい場合には、診断を確実にするために、がん細胞がHTLV-1に感染した細胞かどうか検査を行います。がん細胞がHTLV-1に感染した細胞であればATLであると確定診断されます。
ATLには病気の型(タイプ)があり、その型や症状、年齢などにより治療方法が異なります。抗がん剤を使用する治療が主なものですが、専門医とよく相談しながら治療方法を決めることが大切です。
ATLの治療・セカンドオピニオンに対応している医療機関はこちらから検索することができます。
血液検査 ・HTLV-1というウイルスを保有しているかどうかを調べます(血清の抗HTLV-1抗体検査)。 |
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リンパ節・皮膚生検 局所麻酔を行いしこりのあるリンパ節、あるいは症状の起こっている皮膚の一部を取る小手術です。この組織を顕微鏡で確認し、T細胞のがんであるかどうかを確認します。 |
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その他の病気の状態を調べる検査 ・骨髄検査(骨髄に拡がっていないか調べます。) |
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