Q&A

HTLV-1に関する情報Q&A―83個の質問に専門医が答えました―

目次
1. HTLV-1について[Q1~Q3]
2. ウイルスの検査について[Q4~Q6
3. HTLV-1の感染について[Q7~Q13]
4. 感染予防について[Q14~Q17]
5. キャリアについて[Q18~Q30]
6. 妊婦健診でのHTLV-1抗体検査について[Q31~Q36]
7. 母子感染と感染予防について[Q37~Q40
8. 妊婦がキャリアの場合の授乳方法について[Q41~Q54]
9. キャリアの子どもについて[Q55~Q62]
10. 乳幼児期のキャリア児の管理について[Q63~Q68]
11. HTLV-1によっておこる病気について(ATL、HAM、HU)[Q69~Q82]
12. 患者会やキャリアの会について[Q83]


11 . HTLV-1によっておこる病気について(ATL、HAM、HU)
Q69:HTLV-1感染でどのような病気になるの?
Q70:成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)とはどのような病気ですか
Q71:HTLV-1のキャリアの方が、ATLを発症する危険度はどの程度ですか
Q72:ATLを発症するとどのような症状が認められますか
Q73:ATLの治療法は?
Q74:HTLV-1関連脊髄症(HAM)とはどのような病気ですか
Q75:キャリアからのHAMの発症率は?
Q76:HAMの初期症状は?
Q77:HAMの治療は?
Q78:HU(ぶどう膜炎)とはどのような病気ですか
Q79:HUの治療法は?
Q80:ATLやHAMやHUの発症を予防する方法はあるのでしょうか
HTLV-1の予防接種はありませんか
Q82:ATLの予防・治療法はどのようになっていますか

 


Q69:HTLV-1感染でどのような病気になるの?
 
A:A:HTLV-1感染によって起こる病気をHTLV-1関連疾患と呼び、主に以下の3 つの病気があります。
1. 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)
2. HTLV-1関連脊髄症(HAM:ハム)
3. HTLV-1関連ぶどう膜炎(HU)
HTLV-1関連疾患を予防する方法はまだ分かっていません。発症するのはキャリアのごく一部であり、多くのキャリアは生涯発病することなく過ごされています。


Q70:成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)とはどのような病気ですか

A:
ATLとは、成人T細胞白血病・リンパ腫(Adult T-cell Leukemia Lymphoma)の略で、白血病・リンパ腫の一種です。HTLV-1に感染した血液細胞(Tリンパ球)が、長い年月をかけてがん化する病気です。ATLの症状は、全身のリンパ節の腫れや肝臓や脾臓の腫大、皮膚の発疹、全身倦怠感、意識障害など多岐にわたります。また免疫機能を担っているリンパ球ががん化するため、免疫機能が著しく低下し、重症肺炎など深刻な感染症にかかることもあります。


Q71:HTLV-1のキャリアの方が、ATLを発症する危険度はどの程度ですか

A:感染してからATLを発症するまでに40年以上の長い年月を必要としますので、40歳を超えるまでATLはほとんど発症しません。患者の最低年齢は20歳以上、最高年齢は90歳を超え、発症の平均年齢は約67歳です。 ATLの年間発症率は、40歳以上のHTLV-1キャリアでおよそ1,000人に1人です。また、キャリアの方の一生を通じてみるとこの病気になるのは、男性でおよそ15人に1人、女性はおよそ50人に1人と言われています。生涯において発症する確率は男女をあわせると約5%と言われています。


Q72:ATLを発症するとどのような症状が認められますか

A:
ATLでは以下のようなさまざまな症状がみられます。他に明らかな病気が無く、これらの症状が出てきた場合にはATLを発症している可能性があるため、すみやかに最寄りの医療機関(血液専門医のいる病院が望ましい)を受診してください。
1. 強い倦怠感・高熱がなかなか治らない(通常1週間以上)
2. リンパ節が腫れる
3. なかなか治らない皮膚の赤く盛り上がった発疹
4. 意識障害など


Q73:ATLの治療法は?

A:
ATLは急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型という4つの病型に分けられていて、それぞれの病型によって治療法が異なります。  急性型やリンパ腫型、急性転化型(慢性型やくすぶり型から急性型、リンパ腫型へと移行したもの)は急速に症状が進行する例が多く、早急な治療を必要とするため、抗がん剤による化学療法などが行われます。また免疫低下により重症な感染症を合併する場合も多く、それに対する治療も行われます。  慢性型やくすぶり型は、早急な治療を必要としないことが多く、特に症状がない場合は厳重な経過観察を行います。皮疹などが出現した場合はそれに対する治療を行います。  最近では、抗がん剤と併用して、同種造血幹細胞移植(骨髄移植)が成果を挙げています。ただし、これには患者の年齢や白血球の型(HLA)が合うドナー(提供者)がいるなどの条件が満たされる場合に限ります。比較的高齢の方でも治療可能なミニ移植という治療も行われています。詳しくは、がん情報サービスのホームページで見ることができます。


Q74:HTLV-1関連脊髄症(HAM)とはどのような病気ですか

A:
HAMとは、HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1 Associated Myelopathy)の略称です。HTLV-1感染が原因で、下肢の麻痺や排尿障害などが徐々に起こってくる病気で、平成21年度より厚生労働省難治性疾患克服研究事業の対象疾患(難病)に認定されています。 その原因はまだはっきりとはわかっていませんが、HTLV-1に感染したTリンパ球が脊髄の中に入り込み、炎症を起こすことが原因と考えられています。そして脊髄の中で起こった炎症が慢性的に続くことで、神経細胞が傷つけられます。脊髄には両足、腰、膀胱、直腸などへとつながる神経が通っているので、歩行の障害、感覚障害、排尿障害、便秘などの症状があらわれます。神経細胞は他の多くの細胞とは違って一度傷つけられると元に戻りません。症状を回復させるのは非常に難しく、個人差はありますが年単位で徐々に症状が悪化していく場合が多いです。 HAMは、母乳感染によるキャリアからだけでなく、輸血や性交渉で感染したキャリアでも発症することがあります。発症の年齢は、30~50歳代が多いです。


Q75:キャリアからのHAMの発症率は?

A:30~50歳代の発症が多く1年間でキャリア約3万人に1人の割合で発症するといわれています。現在、全国で約3,600人の患者さんが病気と闘っていると推定されています。キャリアからのHAMの発症率はATLに比べると低い割合です。


Q76:HAMの初期症状は?

A:
HAMの初期症状として以下の項目があげられます。
なんとなく歩きにくい/足がもつれる/走ると転びやすい/両足につっぱり感がある/両足にしびれ感がある/尿意があってもなかなか尿がでない/残尿感がある/頻尿になる/便秘になる
HAMは早期診断・早期治療がとても大切です。キャリアの方で上記のような症状が持続する場合は、すみやかに医療機関を受診してください。診療科は神経内科をおすすめします。
また、受診する場合には
自分がキャリアであること/いつから上記の症状があるか/上記の症状の程度はどのくらいか
をきちんと医師に伝えてください。そうすることで、早急に適切な治療を始めることができますので、あなたの今後の生活を大きく変えることにつながります。


Q77:HAMの治療は?

A:
HAMの経過は個人差が大きく、発症から数年で歩けなくなる重症例から、数十年経過しても歩行可能な軽症例まで、さまざまな経過をたどります。髄液検査で脊髄での炎症の程度を調べることにより、病気の進行をある程度予測することができるので、それぞれの進行度に応じた治療を行うことができます。  現在、HAMの治療法として有効性が認められているのは、脊髄で起きている炎症を抑える効果のある、ステロイド療法とインターフェロン注射療法です。これらの治療は、一時的な症状の改善や症状の進行を抑制するもので、完治させることができる治療法ではありません。  ただし、早いうちに治療を開始することで、病気の進行を最小限にとどめることができるので、できるだけ早く治療を始めることが重要です。  その他、足のしびれ、痛み、つっぱり感、便秘や排尿障害などの症状に対する薬物治療や、足のつっぱりを和らげたり筋力を維持するためのリハビリテーションも行われています。詳しくは、HTLV-1情報サービスに掲載されているHAM診療マニュアルや、難病情報センターのホームページで見ることができます。


Q78: HU(ぶどう膜炎)とはどのような病気ですか

A:
HUとは、HTLV-1関連ぶどう膜炎(HTLV-1 associated uveitis)の略で、HTLV-1感染が原因となって眼のぶどう膜に炎症が起こる病気です。ぶどう膜炎はHTLV-1以外のウイルスや細菌、真菌、寄生虫などによっても起こる病気ですので、HTLV-1はぶどう膜炎のたくさんある原因のうちのひとつとなります。HUはキャリアの約0.1%に認められ、女性が男性の約2倍多く、特にバセドウ病の既往がある方に発症しやすいことが知られています。 またHUは、HAMと同じく輸血感染や性交渉で感染したキャリアでも発症することがあります。 発症の多くは成人で、眼の症状としては、飛蚊症(眼の前に虫やゴミが飛んでいるように見える)や霧視(かすんで見える)、眼の充血、あるいは視力の低下などが急に起こります。キャリアの方で上記のような症状が片眼もしくは両眼に急に起こった場合は、すみやかに医療機関を受診してください。診療科は眼科をおすすめします。


Q79:HUの治療法は?

A:
HUには副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)がよく効きますので、点眼あるいは内服で治療します。およそ1~2か月の治療でほとんどの方が治癒します。ただし、約半数の方でHUが再発しますが、その場合には初回治療と同じように治療します。再発する頻度は1年に数回~数年に1回など、個人差がありますが、再発するたびにきちんと治療をすることで、長期的に視力を良好に保つことができます。いずれの場合にも早期に治療を開始することが大切です。


Q80:ATLやHAMやHUの発症を予防する方法はあるのでしょうか

A:
究は進められていますが、残念ながら現在のところ発症予防法はありません。HTLV-1に関係した病気の発症を防ぐために、キャリアの方が避けるべきことや日常生活でこうしたら良いと言うことは特になく、普通の生活でかまいません。


Q81:HTLV-1の予防接種はありませんか

A:
HTLV-1の感染を防ぐために有効な予防接種は今のところ開発されていません。すでに感染した人にウイルスを体内から取り除く手段もありません。現在、ワクチンの研究は進められています。


Q82:ATLの予防・治療法はどのようになっていますか

A:
HTLV-1キャリアのATL発症予防方法は確立されていませんが、一般的ながん予防の考え方と同様に、禁煙・節酒、適度な運動、バランスの取れた食生活、ストレス緩和など生活習慣を工夫することが必要と考えられます。最近ではATLの効果的治療方法も少しずつ確立され始めています。例えば、造血幹細胞移植が効果を示す症例も増え、さらに、最近では病気の根本的な原因であるATL細胞を特異的に攻撃する新しい治療法も開発され、臨床応用が可能になりつつあります。

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