Q&A

HTLV-1に関する情報Q&A―83個の質問に専門医が答えました―

目次
1. HTLV-1について[Q1~Q3]
2. ウイルスの検査について[Q4~Q6
3. HTLV-1の感染について[Q7~Q13]
4. 感染予防について[Q14~Q17]
5. キャリアについて[Q18~Q30]
6. 妊婦健診でのHTLV-1抗体検査について[Q31~Q36]
7. 母子感染と感染予防について[Q37~Q40
8. 妊婦がキャリアの場合の授乳方法について[Q41~Q54]
9. キャリアの子どもについて[Q55~Q62]
10. 乳幼児期のキャリア児の管理について[Q63~Q68]
11. HTLV-1によっておこる病気について(ATL、HAM、HU)[Q69~Q82]
12. 患者会やキャリアの会について[Q83]


8. 妊婦がキャリアの場合の授乳方法について
Q41:HTLV-1母子感染を防ぐための授乳方法として、どのようなものがありますか
Q42:母乳を与えずに人工乳にすれば、HTLV-1の母子感染は確実に防げますか
Q43:人工栄養を選びましたが、子どもの発育・発達、その他健康に関して問題はないでしょうか
Q44:断乳を考えていますが、育児に影響がありますか

Q45:初乳は赤ちゃんの免疫のためには大切と聞きました。初乳だけでも与えることはできませんか?
Q46:短期母乳栄養を選択した場合、どのくらいの期間が望ましいですか。切り替えはどのように行いますか
Q47:短期母乳栄養を選択した場合、どのようにすればよいですか
Q48:短期母乳栄養を選択した場合、母乳から完全人工栄養に切り替えるのではなく、母乳から凍結母乳栄養に切り替えしてもよいですか
Q49:母乳を中止するのは難しくないですか
Q50:どうしても母乳で育てたいのですが、方法はありますか
Q51:母乳を飲ませない理由を家族に聞かれた場合、どのように返答すればよいでしょうか
Q52:低出生体重児の場合も人工栄養の方がいいのでしょうか
Q53:完全人工栄養の場合、感染症や乳幼児突然死症候群(SIDS)の危険性が高くなるのですか
Q54:もらい乳はしても良いですか

 


Q41:HTLV-1母子感染を防ぐための授乳方法として、どのようなものがありますか
 
A:初乳も含めて、一切、母乳を与えず、人工乳のみで哺育する「完全人工栄養」があります。 また、母乳をどうしても与えたい場合に行う栄養方法として、満3か月までの「短期母乳栄養」と「凍結母乳栄養」があります。「短期母乳栄養」は、生後満3か月を越えない期間、母乳を授乳し、その後、人工乳に切り替える栄養方法で、「凍結母乳栄養」は搾乳した母乳を冷凍庫で凍結し、解凍して与える栄養方法です。


Q42:母乳を与えずに人工乳にすれば、HTLV-1の母子感染は確実に防げますか

A:
現在のところ、一切、母乳を与えず、人工乳のみで哺育しても約3%に感染が成立することがわかっています。これは子宮内での感染や出産時の産道での感染を反映しているものと考えられています。


Q43:人工栄養を選びましたが、子どもの発育・発達、その他健康に関して問題はないでしょうか

A:一般には、全く健康に問題はありません。開発途上国のように、微生物による汚染があるなど安全な水の確保が困難な環境の下でお子さんを育てる場合には、人工栄養は母乳栄養より感染症にかかる危険性が高くなりますが、日本では安全な水が確保されており、また医療も充実していますので、特に心配は不要です。


Q44:断乳を考えていますが、育児に影響がありますか

A:
母乳は本来子どもにとって最善の栄養方法ではありますけれど、一般には、日本のような先進国においては、子どもの発育・発達、その他健康に関する問題は、母乳哺育児と人工栄養児とで大きな違いではありません。 お子さんのことを一生懸命考えて選んだ栄養方法、お子さんへの深く強い愛情表現です。粉ミルクの授乳でも、赤ちゃんをしっかり抱いて、アイコンタクトをとりながら行えば、愛情は十分に伝わります。


Q45:初乳は赤ちゃんの免疫のためには大切と聞きました。初乳だけでも与えることはできませんか

A:
初乳のみのデータはありませんが、3か月以内の短期母乳(初乳のみを含む)では、通常の長期の母乳栄養より感染率が低いことがわかっています。


Q46:短期母乳栄養を選択した場合、どのくらいの期間が望ましいですか。切り替えはどのように行いますか

A:
短期母乳栄養の目安は満3か月が望ましいと考えられています。その理由は、満3か月までの母乳哺育での感染率は3%以下ですが、 4か月間以上の母乳栄養での感染率は15~20%に増加するためです。しかし、そのメカニズムについては今のところ解明されておらず、十分な症例数でないため、今後さらに検証が必要です。満2~3か月に入ってから徐々に母乳と粉ミルクの混合に移行して、満4か月に入ってからは完全に人工乳に切り替えるとよいでしょう。母乳から粉ミルクへ突然変更するのは難しいこともあり、また哺乳びんの乳首に慣れさせておくことも大切ですので、早めに準備を始めましょう。助産師や保健師に詳しい方法をお尋ねください。


Q47:短期母乳栄養を選択した場合、どのようにすればよいですか

A:
初乳のみを飲ませることを希望したり、産休明けで満2か月頃から職場復帰するタイミングまでの授乳を考える場合には、分娩施設入院中に母乳中止の方法について相談するとよいでしょう。満3か月までの授乳を希望される場合も、分娩施設を退院する際に、満3か月で母乳を中止するための方法について情報収集しましょう。満3か月になってから相談をはじめると、母乳の中止が遅くなり感染率を高くしてしまうため、産後2カ月ごろから、母乳中止の方法を理解し、具体的に実施できるよう、助産師、看護師、保健師に相談しましょう。


Q48:短期母乳栄養を選択した場合、母乳から完全人工栄養に切り替えるのではなく、母乳から凍結母乳栄養に切り替えしてもよいですか

A:
理論的には可能ですが、現在のところ詳しいデータはありません。このため産婦人科診療ガイドラインでは 、1. 人工乳、2. 凍結母乳、3. 3か月までの短期母乳 のみを推奨しています。


Q49:母乳を中止するのは難しくないですか

A:
母乳を中止する方法は、分娩後72時間以内に、母乳を止めるための薬を服用する方法があります。それ以降にお薬を内服しても母乳を止めることは出来ないので注意が必要です。母乳の中止の時期については、出産前に決めておいた方がいいと考えられます。完全人工栄養(人工乳)を選択した場合は、この方法で母乳を中止することが出来ますので医師にご相談下さい。
 一方、短期母乳を選択した場合、3ヶ月以降にお薬を内服しても母乳を止めることは基本的に出来ないので注意が必要です。短期母乳後に母乳を中止するのが難しい場合は、搾乳した母乳を凍結させて子どもに授乳をする選択もあります。いずれにしても、中止しようと思っても、必ずしもすぐに中止できないことがあることに注意して、医師、保健師、助産師にご相談ください。


Q50:どうしても母乳で育てたいのですが、方法はありますか

A:
母乳を家庭用冷凍庫で24時間冷凍し、解凍後、哺乳瓶で与える方法があります。この方法でも、母子感染予防は可能であることがこれまでの研究から示唆されています。 栄養面では母乳栄養の利点を活かすことができますが、直接授乳できないことは人工栄養と同じであり、また搾乳や衛生面の配慮など、手間がかかるという欠点もあります。現在のところ、十分なデータがないため、学問的に推奨できる予防法ではありませんが、低出生体重児などの場合で、母乳も与えたいが感染もできるだけ防ぎたい時の選択肢のひとつになります。


Q51:母乳を飲ませない理由を家族に聞かれた場合、どのように返答すればよいでしょうか

A:
HTLV-1キャリアの女性の家庭状況やその他の状況によりさまざまですので、伝え方に「こう話したらよい」というものはありません。本人がHTLV-1キャリアであることを知られたくないのでしたら、「母乳が出ないのよ」「分娩後の母体の状況により授乳が望ましくないと産科医から指導された」などと返答するのも一案でしょう。不安があれば医療機関や保健センターで相談や精神的なサポートを受けることもできます。 また、母乳を与えないことについて、周囲の人がその理由を問うことがないような、配慮ある社会環境をつくることも大切です。


Q52:低出生体重児の場合も人工栄養の方がいいのでしょうか

A:
お子さんが低出生体重児である場合には、細菌感染症や壊死性腸炎という重篤な病気にかかるのを防ぐために母乳栄養が有効です。母乳を搾乳して新生児集中治療室に届けて、いったん冷凍した後、解凍してから飲ませる方法もあります。低出生体重児に対する母乳のメリットは大きいと思われますので、主治医と相談の上で個別に授乳方法・期間を定めることが望ましいと考えられます。


Q53:完全人工栄養の場合、感染症や乳幼児突然死症候群(SIDS)の危険性が高くなるのですか

A:
感染症については、衛生状況など環境のよい日本においては、特に心配は要りません。各種予防ワクチンの接種や感染症の流行期の外出を避けるなどの感染症一般の対応で問題ありません。また、SIDS予防については、うつぶせ寝を避ける、子どもの前で喫煙を避けるなどの対応がより重要であり、他の子どもさんと同じように対応してください。


Q54:もらい乳はしても良いですか

A:
HTLV-1に限らず、人へのさまざまな感染性因子(細菌、ウイルスなど)の感染を防御するという意味で、もらい乳は望ましくありません。

目次に戻る

 

イベント情報 Q&A 用語の解説 説明資料のダウンロード 相談窓口サイトの運営者 利用規約 関連リンク 本サイトへの掲載依頼公的支援